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犬活ノススメVol.2 楠田純子さんとブラックくん

 

楠田純子さんと愛犬ブラックくん♂(愛称ブラ)

平成13(2001)年生まれ ミックス

お散歩ボランティアとは、どのようなものですか。

ARKさん(※動物救援組織アニマルレフュージ関西)でお世話されている犬たちの、文字通りお散歩を手伝うボランティアです。行けばスタッフさんから渡される犬をお散歩に連れ出し、便の状態を散歩表に記入して、次の犬…ということを繰り返していきます。先代犬を介護の末に見送り半年近くたった2012年の夏から、休みを利用して週に1度のペースで通うようになりました。

誰にでもできるものなんでしょうか。

一応、犬の飼育経験などは聞かれますが、あまり関係がないように思います。だって犬を飼ったことがあっても、よその犬をお散歩させる機会ってほとんどないでしょう。私も最初はリードを渡されたとたん、逃がしてしまったらどうしようとか、いろんな不安がこみあげて緊張で固まってしまいましたから。もちろん難しい犬はスタッフさんが担当されるので、そんなに心配はいらないんですが。

 

楠田さんも今ではリラックスしてお散歩されているんですね。

そうですね。慣れていくうちに犬によってこんなに個性が違うんだという発見があり、楽しめるようになりました。なかには何もかも怖くて、それでもじっと耐えてくれる子もいたりして、私が犬だったら絶対噛みついている状況なのに、こんなに我慢してなんて偉いんだろうと思ったり(笑)。あらためて犬って凄いなと感動し、ますます大好きになりました。とてもよい体験をさせてもらっています。

そんななかでブラックくんと出会われた。

ブラの入所は2011年7月で、私がボランティアに入った時にはすでにいたんですが、私、最初の3ヵ月くらい存在に気づかなかったんです(笑)。しばらく担当することがなかったし、なにせおとなしい仔だから。で、お散歩するようになってからも、何を考えているかわかりにくい犬だなと思う程度でした。でもだんだんと、すっと伸びた鼻とか、にぎっとした手とかが可愛いなあと思うようになっていって。あと、犬舎のなかからじっと人の動きを目で追う姿に妙に心惹かれました。お気に入りの仔はできるだけつくらないようにはしていたんですが、やっぱりどの仔も可愛いから、「この仔がうちにいたらこんな感じかな」と妄想してしまうんです。ブラのことも、いいなあ、この仔を引き取った人はこの姿が毎日見られるんだ、なんて想像していましたね。まさかうちに来ることになるなんて思いもせずに。

 

その“まさか”が実現したのはどういう経緯からですか。

いろんなことが連鎖的に動いたんです。まず、初代を6歳半で、2代目を15歳で見送った経験から、「もう犬は飼わない」と宣言していた母が折れてくれたこと。私が在宅で仕事できるようになったこと。もし引き取るならあまり譲渡が成立しそうにない手のかかる犬を。とずっと思っていたんですが、それが可能な条件が整いつつありました。そこで悩んだ末に決めたのが、関節を悪くしたばかりのブラでした。少しおもらし癖もあって、いつも清潔にしてもらっているとはいえ洗いたての冷たいコンクリートの床に寝る姿も不憫で、うちに来たら肌ざわりのいい寝具の上で眠らせることができるなという思いもありました。実はもう1頭気にかかる心臓病の仔がいて、ずいぶん悩んだのですが。今後かかるであろう医療費のこと、自分たちができる世話のことなど、ぐるぐると考え続け、最後に心の声に耳を澄ませて得た答えが「ブラック」でした。それまでも、里親のみなさんはあんなにたくさんの保護犬からたった1頭をどうやって選ばれるんだろうとずっと不思議だったんですけど、結局、理屈じゃないんですよね。なかなか言葉で説明するのは難しいです。

そのときブラックくんは12歳、シニア犬を引き取ることにためらいはありませんでしたか。

大好きなんですよ、老犬(笑)。よぼよぼした犬ほど可愛いと思う。その意味ではブラはまだまだ老い方が足りません(笑)。

先が短いのは悲しい、できるだけ長く一緒にいたいから老犬は嫌という人も多いと思うのですが、私はそうは思わないんです。飼い主が先に逝くわけにはいかないし、遅かれ早かれ別れの日は絶対に来るわけでしょう。2頭を見送った経験から、どれだけ長く一緒の時間を過ごそうが、また短かろうが、喪う悲しみに変わりはないことがわかりました。それなら今、目の前にいて一緒にいる時間を大切にしよう、今できることに集中して、少しでも快適に楽しく過ごさせてやることが飼い主にできるすべてなんじゃないか…と、これは前の子が教えてくれました。

ブラックくんとの暮らしはいかがですか。

一緒に暮らしてみて思うのは、手のかかる犬を希望したはずなのに、まったく手がかからない犬をもらってしまったなあということです。おもらしとか、足が悪いから医者に連れていくとか、そういう手間はかかりますが、それは私たちにとってはなんでもないことなんです。いつもどっしり構えているから、どこへ連れて行っても誰と会わせても安心ですし、病院でも美容院でも「楽な仔」として扱ってもらえます。動きがゆっくりな上、興奮することもまずありませんから、母でも余裕で散歩ができます。ただ、動じない仔だから環境が変わっても大丈夫だろうという予想に反して、わが家に慣れるまでは少し時間がかかりましたが。ふと気がつくとお互いの距離が近くなっている、そんなことの繰り返しで、徐々にうちの仔になってくれた感じです。基本は無表情だし、テンションが一定すぎて何を考えてるかわからないところはあるんですけど(笑)。仕事でPCに向かっていて、ふと振り向くとさっきまで寝ていたはずのブラが起き上がってじっとこちらを見つめていることがあって、そんな時はたまらなく愛おしくなります。…というか、存在すべてが愛おしいです、やっぱり(笑)。

 

お話を伺っていると、シニア犬との暮らしも素敵だなと思います。

本日は貴重なお話をありがとうございました。

 

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